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Inserted: 03-18-2001

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 Die Bahnwelt STORY (c)1992 GLODIA
 #1 Forecs 廃都フォレクス I. −廃墟の都市−


「とんでもないところに来てしまったな」
辺りを見まわしながら、カノールが言う。
周りにそびえる灰色の建物は、すべて水面から突き出していて、
はめられた窓は、そのほとんどが割れている。
私達のいる通路は、高い場所にあるらしく、水につかりきってはいない。
通路のへりから顔を突き出し、下を覗いてみる。
静かに波打つ水面。底は、見えない。かなり深そうだ。
「これからどうしたらいいのかしら」
心細くなって、誰となく問い掛ける。
「どこかに人が住んでいるに違いない。
あるいは通信施設を見つけることができるかもしれない」

カノールは、そう言ってくれたが、あまり期待できそうにない。
確かに、所々破損はしているが、廃墟にしては保存状態が良い。
建物の外壁に埋めこめられている赤い発光装置の明滅を見る限り、
この街は死にきっていないと言える。だけど…。
そう、何と言うか冷たいのだ。人の住む場所にある独特の温もりが感じられない。
ラーニアぼうっとするな。お迎えだ」
「え?」
遠くから、かすかに金属のこすれるような音がする。人間が発する音ではない。
数瞬後、建物の影からそいつは、現われた。
金属独特のつやを帯びた青い箱。その左右につけられた多関節の足を器用に動かし、
こちらに向かって、ぴょんぴょんと跳ねてくる。
「えーと…」
そいつの正面についたセンサーと目が合う。…、見つめられるとちょっと恥ずかしい。
「来るぞ!!」
カノールが叫ぶと同時に、銃撃音が響き渡った。

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飛行艇は墜落し、辺りにはこれといって何も無い。
かろうじて生き残っていた携帯用のレーダには、
西の方角に何かがあると表示されている。
もちろん、レーダーが誤動作を起こしている可能性もある。
あるが、他にこれといった情報があるわけでもない。
飛行艇に積んであったわずかな食料と武器を持って、
俺達は、レーダーの指し示す方向へ歩き出した。
そして、数時間後、湖から突き出す巨大な建造物が眼前に現われた。
橋も何もなく、どうやって中に入ろうか思慮している時、
偶然にも中への転送装置を見つけ、ここに跳んできた。
「出来すぎてるよな…」
「ん?カノール何か言った?」
ラーニアが俺の顔を覗きこむ。
跳ばされて、最初に出会ったロボット達は、こちらを無条件に攻撃してきた。
多分、守衛ロボットの類で、侵入者を攻撃するようプログラムされているのだろう。
手持ちの銃でも簡単に倒せるのだが、倒しても倒しても次々と新手がやってくる。
俺達は体制を立て直す為、近くの建物に入った。
「ここまでは、入ってこないみたいだけど。どうする?あのロボット群団」
ラーニアが、外をうかがいながら言う。
「どうするって、倒して切り抜けて先に進むしか無いだろな」
俺は、ぶっきらぼうに当然な事を言った。
「そうだけど、結構痛いじゃない。あの攻撃」
擦り剥けた腕を見せてラーニアは言う。
「まあな。…ん?あれは…」
部屋の奥に背の高さより少し低いぐらいの棚がある。
シャッターがかけられているので、中は見えない。
「きゃ!なんか良いもの入ってるんじゃない?」
ラーニアが近づくと、シャッターは自動的に開いた。
さすがに最初は警戒していたが、罠も何も無い事が分かると、
ラーニアは、棚の中を探り始めた。
そして、ベルトのようなものを二つ取り出す。
「これ、シールドジェネレータよ!」
つけたものの周りに一時的に防護壁を作り攻撃から身を護る物。
時空都市の遺物と言われている。現在は、改良され、もっと小型になっている。
こんな場所に跳ばされるのが分かっていたら、準備しておいただろう。
何にせよ助かった。もちろん、きちんと動作すればのだが話だが。
試しにベルトを銃で撃ってみる。透明な壁が銃撃を遮り火花を散らした。
「これなら、少しくらい攻撃を受けても大丈夫だな。…行くか!」
「ええ!」
俺達は、ロボットの待ちうける、戸外へ飛び出していった。

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「いー眺めだなー」
眼下に廃墟を見下ろしカノールは呑気な事を言っている。
シールドジェネレータを装着してからは、
さほどダメージも受けず、順調に進んできている。
が、水に阻まれてほとんどの建物には入れない。
たまたま入れた今回の建物には、屋上へ続く階段があった。
「北の方に見えるのは…、神殿かしら」
その建物だけは、他の建物と雰囲気が違った。
周囲に銅像らしきものが置かれているし、壁に凝った模様が刻まれているようだ。
神殿といえば、普通、集会所などに使われる場所なので、人がいる可能性はある。
「神殿にいけばきっと人がいると思うわ」
私の言葉にカノールもうなずく。
「善は急げだ。行くぞ!」
私達は、階段を駆け降り、神殿へ向かった。
途中、ロボットの妨害があったが、
「もしかしたら、人がいるかもしれない」
という、希望あふれる私達の前に、あっけなく敗れ去っていく。
そして、ついに、神殿の入り口につながる橋の前までやって来た。
「この橋を渡れば、神殿までわずかだ」
そう言って、カノールが橋を渡ろうとした途端、事は起きた。
ゴゴゴゴゴ。地に響くような音とともに橋は崩れ去った。
崩れた部分は広く、跳び越えられる幅ではない。橋の下もかなり深さがあるようだ。
つまり、ここから先に進む事は不可能になった、という事だ。
あんまりのことに、私達は、呆然としてしまう。
しばらく、その場所に立ちつくした後、カノールがやっと、口を開く。
「何てこった。神殿にいくルートが絶たれてしまった」
期待していただけあって落胆は激しい。でも…、
「道は常にあるってね。誰かが言ってたわよ」
こんな事ぐらいで、落ちこんでいては何も始まらない。
そう、神殿へのルートは一つとは限らない。
私達は、他のルートを探すべく、また足を進めていった。

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まず、神殿の左隣にある建物に入れないかと、北西に向かった。
が、底の見えない亀裂に阻まれ、先には進めない。
「他にもルートはあるはずよ!」
励ましてくれているのか、根拠も無く強い調子でラーニアが言う。
「そうだな…、この廃墟を取り巻いている、あの巨大な回廊に登れないだろうか」
さっき、屋上から見たとき、この廃墟の周囲には城壁があることが分かった。
良くは見えなったが、城壁の上にも通路があるようだ。
「うーん。とりあえず、入れる限りの建物に入ってみましょ」
ラーニアの言うとおりだ。
上に登る階段、もしくは、何らかの情報があるかもしれない。
俺達は、入ることの出来る建物を片端から調べていった。
しかし、有用な情報は得られない。
代わりに最初の建物にあった棚と同じものをいくつか見つけた。
「何だろうな、これ。倒したロボットもたまに落としていくけど」
手のひらに収まる大きさの金属でできた筒状のもの。
色と形は微妙に違うが、他の棚の中にも同じようなものが入っていた。
「エネルギー反応があるわね。きっと、機械の動力に使われているんだわ。
言うなれば、エネルギーパックってところかしら?」

小型のスキャナーをそれにあて、ラーニアが言う。
何かに使えるかもしれないので、それも持ちだす事にした。
さらに、他の建物には、武器が納められていた。
手持ちのクロスショットは、衝撃波を出すだけだが、
こいつは、レーザーを射出でき、攻撃力はクロスショットより高い。
進んでいくうちに、最初の青いロボットの他に、甲冑のようないでたちの赤いロボット、
低空飛行をする三角形のロボットなども出てきて、苦戦を強いられた。
しかし、先ほど見つけた武器を駆使し、何とか突破していく事が出来た。
だが、肝心の回廊への登り方は分からない。
俺達は足早に、建物を巡っていった。

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「都市の模型だわ。よっく出来てるわねー」
そこには、さっき屋上から見た廃墟を縮小したものが鎮座していた。
細部まで細かく再現されている。あまりの見事さに、私は感嘆の息をもらした。
「模型じゃないよ。ほら、さっき崩れた橋がちゃんと映っている」
が、カノールは、それをあっさり否定した。…ちょっと悔しい。
確かに、模型が最初から橋を崩して作っているなんてわけがない。
何らかの技術で、街全体を3Dで投影しているものなのだろう。
「北東の建物は上に登れそうね」
屋上から見たときは分からなかったが、この投影では、階段がきちんと見える。
私達は、その建物を目指して進んでいった。
が、もう少しの所でとんでもないものが待ちうけていた。
「砲台とは、手厚い歓迎だな」
カノールが皮肉を言う。
そう、そこには、何台かの砲台が設置されていて、
私達に向けて、ひっきりなしに弾を打ちつづけている。
武器で破壊しようとしてみたが、数発撃っただけではびくともしない。
「やりあっても仕様がない。避けて進もう」
砲台の弾の起動は単純なので、避けて進むのは、それほど難しくはない。
とは言うものの、簡単なわけでもなく、何発かは当てられてしまう。
シールドジェネレータを付けていなければ、危なかっただろう。
なんとか砲台の攻撃をくぐり抜けて目当ての建物の前まで来た。だが、
「くそっ、開かない!」
他の建物では何もせずとも開いたドアが、今回に限っては開かない。
「やっぱ、何か認証するものが必要なのかしら。そうすると厄介ね」
私は、そう言いながら、扉をスキャンしてみる。
「仕方ない、銃でふっとばすか」
カノールが銃を構える。
しかし、私は、それを制した。
「無駄よ。このドア、相当厚いわ。この武器じゃ破れないわ」
「施錠しているところを撃てば何とかならないか?」
「物理的なロックじゃなくて、電子的なロックだから…、ん?」
そうか、もしかすると。
「どうした?何か分かったのか?」
「あれ、壊せないかな」
私の指差す方向には、そう、砲台がある。
「無理じゃあないだろうけど、結構堅いぞ」
カノールは、眉間に皺を寄せて、あからさまに嫌そうな顔をした。
「駄目もとよ。砲台とこのドアのコントロール部はいっしょみたいだし」
「もしかするとってわけか。ラーニアを信じて、砲台壊してみるか」
カノールは、向きを変え、砲台に銃を向けた。
「関係してる砲台は3台よ」
私が付け加えると、カノールは、目を見開いて振り返る。
3台全部壊すのか」
私は、答える代わりに、一番近くの砲台に集中放射した。
「分かったよ。やればいいんだろ」
カノールも、銃を撃ち始めた。
「…どうでもいいけど、ラーニア楽しんでないか?」
いや、そういうわけではないんだけれどもね。ちょっとワクワクしない?

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「ここをずーーーっと伝っていけば、神殿の横の建物に続いているわ」
ラーニアが、先を指差した。
俺達は、今、廃墟を囲む回廊の上にいる。
ロボットの攻撃は更に熾烈になり、その上、砲台も至る所に設置してある。
銃弾を避け、応戦しつつ走り抜けていく。
ラーニアの予想どおり、砲台の破壊が、電子ロックを解く鍵となった。
さらに、その建物の中では、新たな武器も見つける事が出来た。
ラーニアが今使っているものがそうだ。
貫通力のあるレーザーが多方向に発射され、更に壁で反射し、
回廊にいるロボットを次々に倒していく。
「急いで、屋上に登らなくて良かったわね」
扉が開き建物に入ってすぐのところに上への階段はあった。
すぐに屋上に登っても良かったのだが、念の為という事で部屋の中を見渡した。
すると、入って右側にスペースがあり、そこに例の棚を見つける事が出来た。
その棚の中には、この武器が入っていたというわけだ。
だが、強力な攻撃を行う為に、エネルギーパックを必要とするようだ。
「分かってると思うけど、後で何があるか分からないから、
エネルギーパック無駄遣いするなよ」

俺の言葉を聞いているのかいないのか、ラーニアは嬉しそうに攻撃を続けている。
先に進むにつれ、更に攻撃は激しくなる。
今までのロボットより、格段に強力な攻撃を仕掛けてくるものも現われ、
更に苦戦を強いられた。
だが、それもなんとかしのぎ、建物の中へ降りられるところまで進む事が出来た。
「ふう、とんでもない攻撃だったな」
俺は、ため息をついた。
「少し休んでからにしよう」
正直、激しい攻撃をかいくぐるのに、少し疲れた。
回廊に登れば、きっとまた、激しい攻撃にさらされるだろう。
「何言ってるの?目的地はもうすぐよ」
回廊の上から見た限りでは、北に進めば、目的地は、すぐそこだ。
ラーニアに促されるまま、俺達はまた、階段を登っていった。
確かに激しい攻撃だったが、敵の攻撃パターンはつかめてきていたので、
今までよりは、楽に進めた。そして、目的の建物には、案外早くたどり着けた。
「こんな亀裂が無ければ、もっと楽にたどりつけたのに」
ラーニアが、文句を言う。
降りたところは、さっき、亀裂が走っていて進めなかった場所だった。
亀裂を恨めしく睨みながら、俺達は、部屋の奥へ進んでいった。
「ここからあの巨大な建物に入れるに違いない」
部屋の奥には扉があった。前に立つと、扉は自動的に開いた。
俺達は、期待を込めて、扉の中へと入っていく。



Die Bahnwelt


to be continued ...
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